今回は、珍味のお話です。
魚食について調べていく中で、とても興味深いものの1つに魚の内臓があります。日本人は歴史的にこれを捨てることなく有効利用してきました。保存食として利用したり、食べれるものは生食もしてきました。余すことなく食べてきた、生活の知恵と言えるでしょう。また様々な工夫を重ねる中で、皆さんご存じの明太子やいくら、数の子といった、長きに渡って愛される地方独特の名物が産まれたのです。
今回は、魚の内臓にスポットをあて、これを使った珍味(名物)に何があるかまとめていきます。
魚の内臓を使った珍味まとめ
表記方法は、
品名【産地】
『魚の種類/内蔵の部位』
としました。
北は北海道から、徐々に南へとご紹介していきます。 それではスタート!
イクラ塩漬け醤油漬け【北海道】
『鮭(or 鱒)/卵巣(真子)』
言わずとも知られたイクラは、鮭の卵です。 卵に膜がついた状態を筋子と呼びますが、その幕を取り除いて、塩や醤油につけたものです。ちなみにロシア語で魚の卵のことをイクラと呼ぶことが語源となっています。鮮やかな色が、食欲をそそりますね。鮭は優秀で、ほとんど捨てるところがありません。
めふん【北海道】
『鮭/腎臓(じんぞう)』
北海道を代表する珍味です。オスの鮭の血合い(腎臓)を塩漬けにして作られます。元々は保存食として作られてものと言われています。アイヌ語で腎臓のことを「メフル」と呼んでいたことが言葉の由来です。
これはサクラマスを以前捌いた時の写真ですが、背骨の下に沿って、赤黒い血合いが入っていますね。これが腎臓で、「めふん」の原料となります。魚の血合いは、血液だと勘違いされやすいですが、これは腎臓です。腎臓を血抜きして、塩漬けします。
酒のおつまみ、ご飯のお供として食べられます。ビタミンB12が豊富に含まれており、貧血や疲労回復に効果があるとして注目されてます。
数の子【北海道】
『ニシン/卵巣(真子)』
ニシンの卵を乾燥させたり、塩漬けにしたものです。ニシンは古くは「カド」と呼ばれていました。この「カドの子」が訛って「カズノコ」になったと言われています。縁起物としておせち料理では定番ですね。北海道の名物として「松前漬け」が有名です。スルメと昆布を合わせ調味した料理です。
以前は漁獲量が多かったニシンですが、今ではかなり減少しています。この数の子目当ての乱獲が原因とも言われています。
たつのかまぼこ(たちかま)【北海道】
『タラ/精巣(白子)』
タラの白子をカマボコにしたものです。積丹地方が発祥とされています。北海道ではマダラのことを「タツ」や「タチ」と呼びます。元々はこの「タツ」の白子を保存用として、練ってカマボコにしたことが始まりです。焼いたり鍋に入れたり様々な料理に使えます。
カスベのほっぺ【北海道】
内臓とは違いますが・・・「カスベのほっぺ」もご紹介しておきます。カスベとは北海道地方の方言でエイを指します。すなわちエイのホホ肉です。当サイトでも実際に食べてみましたが、これが珍味中の珍味。とっても美味しかったですよ。
どんぴこ【東北地方】
『鮭/心臓』
鮭の心臓は「どんぴこ」と呼ばれ、東北地方で食されてきたようだ。鮭1匹から1つしかとれないので、希少部位と言えるでしょう。以前はこの様な商品もあった様です。
モウカの星【宮城県】
『ネズミザメ/心臓』
モウカとはモウカザメのことで、標準和名は「ネズミザメ」。星は心臓のことですね。ネズミザメは気仙沼に水揚げの多い全長3mほどのサメで、その身も刺身やステーキ、煮物などで食べられます。時々スーパーに売ってますね。そのネズミザメの心臓が「モウカの星」。こちらも生食されることが多い様です。
ふぐの卵巣のぬか漬け【石川県】
『ふぐ/卵巣』
ふぐの卵巣と言えば、猛毒がある箇所。それを糠につけ2~3年熟成させると毒が抜け、食べれる様になるのです。不思議ですね。なぜ無毒化するかについては、塩の効果であるとか、微生物の影響であるとかの説は立てられている様ですが、まだはっきりとは解明されていない様です。幻の珍味、お試しに如何でしょうか。
いしり【石川県】
『イワシやイカ/内蔵』
醤油ににた調味料で、こちらも能登半島が主な産地。内臓を塩漬けにして自然発酵させ、その汁を煮詰めて作られます。これを使った「いしり鍋」が有名。いわゆる魚醤の一種となります。
アン肝【茨城県】
『アンコウ/肝臓』
これは皆さんご存じでしょう。肝に塩を振って、巻きすで形を整え、蒸しあげたもの。産卵期の春~夏の初めころが形も大きく美味しいと言われていわれています。私も以前アン肝鍋を頂いたことがありますが、アン肝自体は肝独特の味がするのですが、意外にサッパリと食べやすい。そして何と言っても、肝から取れる出汁ですよ。これが美味しい。
酒盗【高知県】
『カツオ/胃と腸』
酒盗は「しゅとう」と読みます。カツオの胃と腸を塩漬けにして、一年間くらい熟成させたもの。お酒がすすむから酒盗と名付けられたと言われています。お酒のおつまみやご飯のお供として食べられます。
カツオのへそ【高知県や静岡県】
『カツオ/心臓』
ネズミザメに続いての心臓シリーズは「カツオのへそ」で御座います。カツオの心臓ですね。弾力がある食感が良く、肉のレバーに似た味わいと言われています。こちらも1匹に1つの希少部位ですね。
明太子【福岡県】
『スケトウダラ/卵巣(真子)』
皆さんご存じ明太子は、スケトウダラの卵巣を唐辛子に付け込んで熟成させたものです。タラコなので真鱈の卵と勘違いしている場合がありますが、スケトウダラの卵です。
からすみ【長崎県】
『ボラ/卵巣(真子)』
ボラの卵巣を塩漬けして乾燥させたもので、中国から300年以上も前に伝えられたとされています。日本三大珍味の1つに挙げられており、「ウニ」「このわた」そしてこの「からすみ」です。漢字で書くと唐墨。中国の墨に外観が似ていたことが名前の由来です。お酒のおつまみにスライスしたり炙ったりの他、チーズの様に削ってパスタに掛けるなんて使い方もできますね。
キャビア【宮崎県】
『チョウザメ/卵巣(真子)』
国産のキャビアがあることをご存じですか?あるんです!1983年に日本の6県が、ロシア(旧ソ連)から譲り受けたチョウザメの稚魚の飼育を開始したのです。それからなんと30年という月日を掛け、2004年に宮崎県水産試験場がシロチョウザメの完全養殖に成功しました。その後、独自製法も開発しながら、一般販売されるまでに至っています。今では、世界に愛好家を持つまでに成長し、2017年には「日本ギフト大賞2017 ふるさとギフト最高賞」を受賞しています。30年以上の努力の結晶、国産キャビアです。
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まとめ
如何でしたか。今回は『魚の内臓を使った珍味』をご紹介しました。よく知られているお土産定番品の様なものもあれば、地域に根付いた独特な名産もありました。フグの卵巣の無毒化なんて、執念が生み出した逸品でしょう。また宮崎県では国産キャビアの養殖への挑戦が現在進行中であり、未来志向の新たな取り組みがされていることもお分かりいただけたと思います。世界に通用するキャビア、日本の誇りですね。
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