
流量計って何?なぜ重要なの?
流量とは、単位時間あたりに特定の場所を通過する流体の量を示すものです。この流体の量は、体積または質量で表されます。たとえば、家庭の蛇口から出る水の量をリットル毎分(LPM)で示したり、パイプラインを流れるガスの量を立方メートル毎時(m³/h)で示したりします。
産業において、流量の正確な測定は非常に重要です。その理由は多岐にわたります。
- プロセス制御: 化学プラントや食品加工施設では、反応や混合のために正確な量の原料を投入する必要があります。流量計は、これらのプロセスを正確に制御するために不可欠です。
- 効率最適化: 発電所での燃料消費量や、都市の水道システムでの水の流れを監視することで、エネルギーや資源の効率的な利用を促進します。
- コスト管理: 水道やガスの料金は、消費量に基づいて計算されます。正確な流量計は、公正な取引を保証します。
- 安全: パイプラインの漏れを早期に発見したり、危険なプロセスにおける流量を適切に制御したりすることで、事故を未然に防ぎます。
流量計は、産業プロセスの「速度計」のような役割を果たし、流体の流れを可視化し、管理するための重要な情報を提供します。流量を正確に把握することで、製造業者は製品の品質を向上させ、エネルギー企業は運用コストを削減し、環境保護活動家は汚染を監視することができます。流量計がなければ、現代の産業は効率的かつ安全に機能することは難しいでしょう。

流量計の種類にはどんなものがある?
産業用には、さまざまな原理に基づいて動作する多くの種類の流量計が存在します。それぞれの流量計は、特定の用途や流体の特性に適しています。この記事では、以下の9種類の流量計について詳しく解説します。
- コリオリ流量計
- 熱式流量計
- 容積流量計
- 差圧流量計
- 面積流量計
- タービン流量計
- 渦流量計
- 電磁流量計
- 超音波流量計
これらの流量計は、それぞれ異なる物理原理を利用して流量を測定しており、そのため、測定できる流体の種類、精度、設置方法、そしてコストも異なります。適切な流量計を選ぶことは、産業プロセスの効率性、コスト、そして安全性に直接影響を与えるため、非常に重要な決定となります。

それでは一つ一つその特徴を見て行こう!

各流量計の詳細
コリオリ流量計
計測原理と一般的な精度
コリオリ流量計は、コリオリ効果という物理現象を利用して流量を測定します。これは、回転する物体上で移動する物体が受ける見かけの力のことです。遊園地の回転するメリーゴーラウンドの上を歩こうとすると、横方向に力がかかるのを感じるでしょう。これがコリオリ力です 。
コリオリ流量計では、流体を流す振動するチューブを使用します。流体がこの振動するチューブを通過する際、流体の慣性によってチューブにねじれが生じます。このねじれによりチューブの入口と出口では、振動の位相に差が生じます。この位相の差(時間差とも言える)は、チューブに沿って入口と出口に配置されたセンサーによって測定されますが、質量流量に直接比例します。これが質量流量を計測する原理です。また一部のコリオリ流量計は、チューブの振動周波数を計測することで、流体の密度も同時に測定できます(重りを付けたバネを想像してください。重りの違いによって、バネの振幅や時間は違いますよね)。温度計付きであれば、温度測定も可能です。
コリオリ流量計の一般的な精度は非常に高く、液体の場合、流量の±0.1%から±0.5%の範囲です。高性能なモデルでは、さらに高い精度を実現できます。この高い精度と、温度や圧力の変化に影響を受けにくい質量流量を直接測定できる点が、コリオリ流量計の大きな特徴です。
一般的な流体条件
コリオリ流量計は非常に汎用性が高く、液体、気体、そしてスラリー状の流体の流量測定に使用できます。原油や重油のような高粘度の流体から、水、化学薬品、食品、飲料、医薬品に至るまで、幅広い種類の流体を測定できます。適切な材質を選定すれば、腐食性の流体にも対応可能です。また、広い温度範囲と圧力範囲に対応できる設計も存在します。質量流量を直接測定する原理上、流体の密度や温度が変動する場合でも、正確な測定が可能です。
据付上の注意点
コリオリ流量計を設置する際には、いくつかの注意点があります。外部からの振動が測定に影響を与える可能性があるため、流量計はしっかりと固定する必要があります。振動源となる機器の近くへの設置は避けるべきです。また、流量計の内部に空気が溜まらないように、液体を測定する場合は、垂直上向きの流れになるように設置することが推奨されます 。水平配管への設置も可能ですが、垂直下向きの流れは避けるべきです。配管の設計段階で、空気の混入を防ぐ工夫も重要です。制御弁は、キャビテーションやフラッシングを防ぐために、流量計の下流に設置することが推奨されます。流量計を設置後、そして定期的に、ゼロ点調整を行うことが重要です。
メリット
コリオリ流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 高い精度と再現性。
- 質量流量を直接測定するため、温度や圧力による補正が不要。
- 液体、気体、スラリーなど、多様な流体を測定可能。
- 密度や温度などの複数のパラメータを同時に測定できる機種もある。
- 可動部がないため、メンテナンスが容易。
- 流体の特性が不明な場合や変動する場合でも有効。
- 双方向の流量測定が可能。
- 直管長の確保が不要な場合が多い。
デメリット
コリオリ流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 他の流量計と比較して高価である
- 外部振動の影響を受けやすい
- 低密度の気体や低圧の流体の測定には適さない場合がある
- 経年的にゼロ点がずれる可能性がある
- 比較的大型で重量がある
- 圧力損失が大きい傾向がある
- 特定の流体条件では、精度が低下する可能性がある(例:高粘度流体)
どういう時に選定するか
コリオリ流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 高精度な流量測定が要求される場合(特に取引や課金に関わる用途)
- 質量流量を直接測定する必要がある場合
- 流体の密度や温度が変動する環境下での流量測定
- 粘性流体や腐食性流体の流量を測定する場合
- 1台の機器で流量だけでなく、密度や温度などの複数のパラメータを測定したい場合
- 上流・下流に十分な直管長を確保できない配管への設置
熱式流量計
計測原理と一般的な精度
熱式流量計は、流れる流体に熱を加え、その熱の移動を測定することで流量を算出します。熱式流量計には、主に2つの方式があります。一つは、既知の量の熱を流体に加え、その結果として生じる温度変化を測定する方式です。もう一つは、センサーを一定の温度に保ち、そのために必要なエネルギーを測定する方式です。流速が速いほど、より多くの熱が奪われるため、この熱の移動量を測定することで質量流量を直接的に把握できます 。熱式流量計は、主に気体の質量流量測定に用いられます。
一般的な精度は、流量の±1%から±3%の範囲です。高性能なモデルでは、±1%の精度を達成できるものもあります。熱式流量計は、気体の質量流量を直接測定できるため、温度や圧力の補正が不要であるという大きな利点があります。
一般的な流体条件
熱式流量計は、主に気体の流量測定に使用されます。空気、窒素、アルゴン、天然ガス、水素など、様々な種類の気体を測定できます。一部のモデルでは、液体やスラリーの測定も可能ですが、気体ほど一般的ではありません 。低流量の気体測定や低速のガス流速の測定に適しています。ただし、流体の熱伝導率や比熱などの熱的特性が既知である必要があります。また、凝縮性のあるガスや、センサーに付着物を堆積させる可能性のある流体には注意が必要です。
据付上の注意点
熱式流量計を設置する際には、いくつかの注意点があります。一般的に、流量計は水平に設置することが推奨されます。特に、高圧(10バール以上)で使用する場合は、水平設置が望ましいです。機械的な振動や熱源の近くへの設置は避けるべきです。流量計の入口と出口の直前には、急な角度や乱流の原因となる障害物を避ける必要があります。特に高流量の場合には、流量計の入口から少なくとも10倍の配管径の直線距離を確保することが推奨されます。配管システムが清潔であることを確認し、水分や油分のないガス流を確保するために、流量計の上流にフィルターを設置することが推奨されます。静電気放電(ESD)に注意し、圧力印加前に電気接続を行うこと、圧力を徐々に加えることなども重要です。
メリット
熱式流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 気体の質量流量を直接測定でき、温度や圧力の補正が不要
- 低流量の気体測定に優れている
- 広い流量範囲(ターンダウン比が高い)
- 設置が比較的容易
- 可動部がないため、メンテナンスが容易で信頼性が高い
- 他の質量流量計(コリオリ式など)よりも経済的な場合がある
- 飽和ガスにも使用可能
デメリット
熱式流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 校正が特定のガスまたは混合ガスに依存し、ガス組成が変わると精度が低下する
- 一般的に、清浄で非研磨性の媒体にのみ適している
- 媒体の熱的特性(熱伝導率、比熱)が既知である必要がある
- 湿潤ガス中の水分凝縮が測定誤差の原因となる可能性がある
- 高流量での感度が低下する可能性がある
- 不十分な上流側直管長の影響を受けやすい
- 初期費用が他の技術と比較して高くなる場合がある
どういう時に選定するか
熱式流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 低流量の気体の質量流量を直接測定したい場合
- エネルギー管理システム、工業プロセス制御、環境アプリケーションなど、温度や圧力補正なしで質量流量を知りたい場合
- 天然ガス、水素、その他の可燃性ガスの流量測定
- 広い流量範囲で安定した測定が必要な場合
- 設置スペースが限られている場合や、既存の配管システムへの後付け設置
容積流量計
計測原理と一般的な精度
容積流量計(PDメーター)は、流体を一定の既知の容積の区画に繰り返し分離し、その区画が通過する回数を数えることで流量を測定します。これは、バケツに液体を一杯になるたびに注ぎ出し、その回数を数えるという概念に似ています。メーター内部の回転部品(ギア、ローター、ピストンなど)が、流体の流れによって駆動され、一定量の流体を区画ごとに移動させます。この回転数や移動数を計測することで、通過した流体の総体積を直接的に測定できます。
容積流量計の一般的な精度は非常に高く、流量の±0.1%から±2.5%の範囲です。高粘度の流体を測定する際に、特に高い精度を発揮する傾向があります。
一般的な流体条件
容積流量計は、主に粘度の高い液体、例えば油、燃料、溶剤などの流量測定に最適です。水にも使用できますが、他の技術の方が適している場合もあります。非導電性の液体にも使用可能です。ただし、測定する流体は清浄で、大きな粒子や異物を含まないことが推奨されます。スラリーや研磨性、腐食性の流体は、メーターの内部部品を摩耗させる可能性があるため、一般的に推奨されません。また、流体に気泡が混入している場合、正確な測定ができないことがあります。
据付上の注意点
容積流量計の設置には、特別な直管長の要件はありません。水平または垂直(上向きの流れが推奨)のどちらの方向にも設置できます。メーターが常に流体で満たされているように設置することが重要です。背圧が必要な場合もあります。配管内のゴミや異物は、メーターの故障の原因となるため、設置前に配管を十分に洗浄する必要があります。また、メーターの入口側にフィルターを設置することが推奨されます。制御弁や流体調整器の上流に設置することが望ましいです。メーターを空運転させないように注意が必要です。
メリット
容積流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 高い精度と再現性
- 高粘度の流体の測定に適している
- 低流量でも高い精度を維持できる
- 機械式モデルは電源が不要
- 温度、圧力、粘度の変化の影響を受けにくい
- 間欠的な流れの測定も可能
- 直管長の確保が不要
デメリット
容積流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 清浄な流体が必要で、異物や大きな粒子に弱い
- 一般的に一方向の流れの測定に適している
- 流体に気泡が混入していると測定誤差が生じる
- 大型で重量がある場合がある
- 圧力損失が大きい場合がある
- 大型サイズは高価になる傾向がある
- 内部に可動部があるため、摩耗や損傷のリスクがある
どういう時に選定するか
容積流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 高粘度の流体の流量を正確に測定したい場合
- 低流量での高精度な測定が必要な場合
- 電源が利用できない環境で使用する場合(機械式モデル)
- 流量の変動が激しいアプリケーション
- 石油・ガス、化学、医薬品、食品・飲料など、様々な産業における在庫管理や燃料消費量の監視
差圧流量計
計測原理と一般的な精度
差圧流量計は、配管内に設けられた絞り機構(オリフィス板、ベンチュリ管、ノズルなど)の前後の圧力差を測定し、その圧力差と流量の関係を利用して流量を算出します。流速が増加すると、絞り部での圧力降下が大きくなるため、この圧力差を測定することで流量を間接的に知ることができます。流量は、圧力差の平方根に比例します。差圧流量計は、液体、気体、蒸気の流量測定に広く使用されています。
一般的な精度は、使用する絞り機構の種類によって異なり、流量の±0.5%から±5%の範囲です。オリフィス板は一般的に精度が低い傾向がありますが、ベンチュリ管やV-Cone流量計はより高い精度を実現できます。
一般的な流体条件
差圧流量計は、液体、気体、蒸気の流量測定に適しています。清浄な流体だけでなく、適切な設計(パージやシールなど)により、汚れた流体にも使用できます。一部の設計では、粘性流体やスラリーの測定も可能です。特に気体の測定では、流体の密度を考慮する必要があり、温度や圧力の補償が必要になる場合があります。
据付上の注意点
差圧流量計を設置する際には、上流側と下流側に十分な直管長を確保することが非常に重要です。一般的に、上流側には5〜20倍、下流側には2〜10倍の配管径の直管が必要です。これは、安定した流れのプロファイルを確保し、測定精度を向上させるためです。オリフィス板の場合は、正確なセンタリングが不可欠です。圧力タップの向きは、測定する流体(気体または液体)によって異なります(水平配管の場合、気体は上部、液体は下部が推奨されます)。脈動流がある場合は、流量計を脈動源から遠ざけるか、ダンパーを使用する必要があります。インパルスラインは、短く、適切な勾配で設置し、気体や液体の蓄積を防ぐ必要があります。
メリット
差圧流量計の主なメリットは以下の通りです。
- シンプルな設計で可動部がない
- 比較的安価である
- 液体、気体、蒸気など、幅広い流体に使用可能
- 長年の実績があり、技術が確立されている
- 温度や圧力センサーと組み合わせることで、質量流量を測定できる
- 大口径の配管にも適用可能
デメリット
差圧流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 圧力損失が大きい場合がある
- 流量と圧力差の関係が非線形であるため、ターンダウン比が低い(一般的に3:1または4:1)
- 設置条件に精度が大きく左右される
- 経年的な摩耗や腐食が発生する可能性がある
- 流体の密度変化に影響を受けやすい
- インパルスラインが詰まったり、凍結したり、漏れたりする可能性がある
- 他の流量計と比較して精度が低い場合がある
どういう時に選定するか
差圧流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 液体、気体、蒸気の一般的な流量測定
- 高温・高圧の蒸気アプリケーション
- コストが重要な考慮事項である場合
- 大口径の配管での流量測定
- 可動部がない流量計を希望する場合
面積流量計
計測原理と一般的な精度
面積流量計(可変面積流量計、ロータメーターとも呼ばれます)は、流体の流れによってテーパーのついたチューブ内のフロート、ピストン、またはベーンが持ち上げられ、流路面積が変化する原理を利用して流量を測定します。流量が増加すると、フロートはより高い位置まで持ち上げられ、流体が通過できる面積が大きくなります。フロートの高さは流量に直接比例するため、チューブに刻まれた目盛りを読むことで、瞬時に流量を知ることができます。重力またはスプリングの力が、流量が減少した際にフロートを元の位置に戻します。重力式のロータメーターは垂直に設置する必要がありますが、スプリング式のものは任意の方向に設置できます。
一般的な精度は、フルスケールの±1.6%から±5%の範囲です。一部のモデルでは、±2%の精度を達成できます。
一般的な流体条件
面積流量計は、液体と気体の流量測定に使用できます。一部のモデルは蒸気の測定にも対応しています。様々な粘度の流体を扱うことができますが、粘度が変化すると精度に影響が出る可能性があります。一般的に清浄な流体に適しており、粒子状物質はフロートの動きを妨げる可能性があります。適切な材質を選定すれば、腐食性の液体にも使用可能です 74。
据付上の注意点
重力式のロータメーターは、垂直に設置し、流れは下から上にする必要があります。スプリング式のものは任意の方向に設置可能です。チューブが垂直であることを確認してください(傾きは2度以内が推奨されます)。より高い精度を得るためには、上流側と下流側にそれぞれ5D程度の直管部を設けることが望ましいですが、必須ではありません。過度の振動、熱源、腐食性環境への設置は避けるべきです。メンテナンスのために、上流側と下流側に適切なバルブを設置してください。液体中に気泡が含まれる場合は、上流側に気泡分離器を設置することを検討してください。
メリット
面積流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 流量を直接目視で確認できる
- 線形スケールである
- 比較的広い測定範囲を持つ
- 圧力損失が小さい
- シンプルで信頼性の高い設計
- 設置とメンテナンスが容易
- 比較的低コストである
- 電源が不要
- 低〜中粘度の媒体に対して良好な精度を持つ
デメリット
面積流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 重力式のものは垂直設置が必要
- 流体の密度、粘度、圧力の変化によって精度が影響を受ける可能性がある
- 析出物や結晶化する液体には適さない
- 大きな粒子状物質を含む流体には適さない
- 脈動流には適さない
- ガラス管製のものは破損しやすい
- ターンダウン比が比較的低い(一般的に10:1程度)
どういう時に選定するか
面積流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 流量を視覚的に確認したい場合
- 低流量の測定
- プロセス流量の監視、パージガスの流量、冷却水の流量測定
- シンプルで低コストの流量計が必要な場合
- 電源が利用できない環境
- 直管長の確保が難しい配管
タービン流量計
計測原理と一般的な精度
タービン流量計は、流体の運動エネルギーを利用して、流れの中に設置されたタービンローターを回転させます。ローターの回転速度は、流体の流速に正比例します。ローターの回転は、磁気ピックアップ、誘導ピックアップ、または光検出などの電子的な方法で検出され、流量に比例したパルス周波数信号を生成します。このパルス数をカウントすることで、積算流量を測定できます。タービン流量計は、清浄な液体、気体、蒸気の流量測定に広く使用されています。
一般的な精度は、流量の±0.5%から±1.5%の範囲です。高精度モデルでは、±0.25%以下の精度を達成できるものもあります。
一般的な流体条件
タービン流量計は、低粘度の清浄な液体、気体、蒸気の測定に最適です。水流量測定によく使用されます。幅広い温度範囲と圧力範囲に対応できます。高粘度の流体や、大きな粒子状物質を含む流体には適していません。気体の流量測定では、密度変化を考慮するため、温度と圧力の補正が必要となる場合があります。
据付上の注意点
タービン流量計を設置する際には、上流側(10〜15D、障害物がある場合は最大50D)と下流側(5D)に十分な直管長を確保することが非常に重要です。これは、安定した流れのプロファイルを確保し、乱流の影響を最小限に抑えるためです。流量計には流れ方向を示す矢印が付いているため、正しい方向に設置する必要があります。垂直(上向きの流れが推奨)または水平に設置できます。配管は常に流体で満たされている必要があります。一部のモデルでは、上流側に鉄粉フィルターを設置する必要があります。電気的ノイズを発生する機器の近くへの設置は避けるべきです。キャビテーションを防ぐために、背圧をかける必要がある場合があります。
メリット
タービン流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 比較的高い精度と再現性
- 広い流量範囲とサイズに対応可能
- 圧力損失が小さい
- 気体と液体の両方に使用可能
- 購入コストが比較的低い
- 構造がコンパクトで軽量
- 出力が直接デジタル(パルス周波数)である
デメリット
タービン流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 清浄で低粘度の流体が必要
- 流れの乱れやスワールに敏感で、直管長が必要
- 可動部があるため、摩耗や定期的な校正が必要
- 一般的に双方向の流れには対応していない。一部モデルは対応。
- 流体の粘度変化によって精度が影響を受ける可能性がある
- 気体の流量測定には、温度と圧力の補正が必要
- 最大流量を超えて使用すると、早期摩耗の原因となる
どういう時に選定するか
タービン流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 比較的安定した高速流れの清浄な液体や気体の流量を正確に測定したい場合
- 水、化学薬品、燃料などの清浄な液体の流量測定
- 石油産業における取引(カストディトランスファー)用途
- 機械的な流量計で、比較的高い精度を求める場合
- 広い流量範囲に対応できる流量計が必要な場合
渦流量計
計測原理と一般的な精度
渦流量計は、カルマン渦列という物理現象を利用して流体の流速を測定します。流れの中に障害物(一般的に「渦発生体」または「ブロフボディ」と呼ばれる)を置くと、その下流側に交互に渦が発生します。この渦が発生する頻度は、流体の流速に比例します。渦流量計に内蔵されたセンサーが、この渦の発生頻度を検出し、体積流量を算出します。一部のモデルでは、温度や圧力センサーを内蔵しており、質量流量を計算することも可能です。渦流量計は、液体、気体、蒸気の流量測定に使用されます。
一般的な精度は、流量の±0.7%から±2.5%の範囲です。液体の場合、±0.5%程度の精度が得られることもあります。
一般的な流体条件
渦流量計は、液体、気体、蒸気の流量測定に適しています。水や蒸気の測定によく使用されます。高粘度の流体(約10cP以上)には適していません。清浄な液体や気体だけでなく、ある程度の汚れを含む流体にも使用できますが、大きな粒子は詰まりの原因となる可能性があります。適切な渦の発生には、乱流(レイノルズ数 > 10,000)が必要です。
据付上の注意点
渦流量計を設置する際には、上流側(15〜35D)と下流側(5〜10D)に十分な直管長を確保することが重要です。これは、安定した流れのプロファイルを確保し、測定精度を向上させるためです。渦発生体が流れの方向に対して垂直になるように設置してください。液体を測定する場合は、流量計の本体が常に液体で満たされているように設置し、気体や蒸気を測定する場合は、凝縮水が溜まらないように注意してください。外部からの過度な振動は、測定誤差の原因となるため避けるべきです。制御弁は、流量計の下流に設置することが推奨されます。
メリット
渦流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 気体、液体、蒸気の測定に汎用性がある
- 初期設置コストが比較的低い
- 可動部がないため、メンテナンスが容易
- 信頼性が高く、比較的正確
- 体積流量測定において、流体の温度、圧力、密度、粘度の影響を受けにくい
- 適切な口径であれば、広い測定範囲を持つ
- 差圧流量計よりも圧力損失が小さい
デメリット
渦流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 振動に弱い
- 汚れた流体の測定には適さない可能性がある(詰まりの可能性)
- 長い直管長が必要
- 低レイノルズ数の流体(低流量または高粘度)の測定には適さない
- タービン流量計と比較してメーター係数が低い
- 脈動流には適さない
- 二相流の測定では誤差が生じる可能性がある
どういう時に選定するか
渦流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 蒸気、液体、気体の体積流量を測定する場合
- 蒸気関連のアプリケーション(蒸気噴射、地域エネルギーシステム)
- 非導電性またはわずかに導電性の液体(炭化水素、脱イオン水など)の流量測定
- 広いターンダウン比が必要な場合
- 冷却回路や水性液体の測定
- 精度とコストのバランスが取れた流量計が必要な場合
電磁流量計
計測原理と一般的な精度
電磁流量計(マグメーターとも呼ばれます)は、ファラデーの電磁誘導の法則を利用して、導電性流体の流量を測定します。磁場内で導電性流体が流れると、流速に比例した電圧が誘導されます。流量計に設置された電極がこの誘導電圧を検出し、トランスミッターが電圧を流量に変換して表示します。電磁流量計は、下水処理場や汚れた液体、導電性または水性の液体に最適です。
一般的な精度は、流量の±0.2%から±2%の範囲です。特定の条件下では、さらに高い精度を達成できるモデルもあります。
一般的な流体条件
電磁流量計は、導電性のある液体のみを測定できます(最小導電率が必要、通常> 5 μS/cm)。炭化水素、蒸留水、多くの非水溶液には適していません 。下水、スラリー、酸、アルカリなどの測定に最適です。清浄な液体、衛生的な液体、汚れた液体、腐食性液体、研磨性液体にも使用できます。気体、蒸気、または大量の気泡を含む液体は測定できません。ライニング材によって、使用できる温度範囲に制限があります。
据付上の注意点
電磁流量計を設置する際には、配管が常に液体で満たされている必要があります。上流側に5〜10D、下流側に1〜2Dの直管長を確保することが推奨されます。一部モデルでは、より長い直管長が必要となる場合があります。磁気干渉のある場所は避けてください。適切な接地が不可欠です。非導電性の配管を使用する場合は、接地リングが必要になることがあります。ポンプの吸込側ではなく、吐出側に設置してください。過度の振動は避けてください。
メリット
電磁流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 可動部がなく、メンテナンスが容易で信頼性が高い
- 流路に障害物がないため、圧力損失が小さい
- 腐食性液体や研磨性液体にも対応可能(適切なライニング材を使用)
- 双方向の流量測定が可能
- 広い測定範囲を持つ
- 高い精度
- 液体の温度、圧力、密度、粘度の影響を受けにくい(体積流量)
デメリット
電磁流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 導電性のある液体しか測定できない
- 気体や蒸気は測定できない
- 短い直管長が必要
- 外部の電磁干渉を受けやすい
- 設置と試運転が他の流量計よりも複雑な場合がある
- 高温や腐食性条件では、ライニング材の検討が必要
- 流れのプロファイルが不均一な場合、精度に影響が出る可能性がある
どういう時に選定するか
電磁流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 下水処理場での流量測定
- 水、酸、アルカリ、スラリーなどの導電性液体の流量測定
- 化学・石油化学産業
- 食品・飲料、医薬品産業
- 低圧力損失と低メンテナンスが要求される場合
- 水性溶液の正確な測定
超音波流量計
計測原理と一般的な精度
超音波流量計は、超音波を使用して流体の流速を測定し、それに基づいて流量を算出します。主に2つの方式があります。一つは、流体の流れと同じ方向と逆方向に超音波パルスを送信し、その通過時間の差を測定する「通過時間差方式(タイムトランジット)」です。流れが速いほど、順方向の通過時間は短くなり、逆方向の通過時間は長くなります。もう一つは、流体中の粒子や気泡によって反射された超音波の周波数の変化(ドップラー効果)を測定する「ドップラー方式」です。流速が速いほど、周波数の変化が大きくなります。超音波流量計は、液体や気体の流量測定に使用されます。
一般的な精度は、使用する方式やアプリケーションによって異なりますが、±0.5%から±2%の範囲です。通過時間差方式は、清浄な液体に対してより高い精度を発揮します。
一般的な流体条件
超音波流量計は、通過時間差方式とドップラー方式で適した流体条件が異なります。通過時間差方式は、清浄な液体(水、油、化学薬品など)や気体の測定に最適です。ドップラー方式は、液体中に懸濁粒子や気泡を含む流体(下水、スラリーなど)に適しています。ただし、ドップラー方式では、測定に必要な量の粒子や気泡が存在する必要があります(通常、100μm以上の粒子または気泡が100ppm以上)。流体の音響特性(温度、密度、粘度)が測定に影響を与える可能性があります。不透明な流体や、固体や気泡の濃度が高い流体は、信号の減衰を引き起こし、測定を妨げる可能性があります。
据付上の注意点
超音波流量計の設置には、いくつかの注意点があります。クランプオン式の流量計の場合、トランスデューサーと配管の間に良好な音響結合を確保するために、適切なカップリング剤(ゲルなど)を使用することが重要です。インライン式の流量計の場合は、配管が常に液体で満たされていることを確認してください。上流側(5〜10D)と下流側(2〜5D)に推奨される直管長を確保してください。過度の温度変化や振動のある場所への設置は避けるべきです。水平配管にクランプオン式トランスデューサーを取り付ける場合は、配管の上部(12時)ではなく、側面(3時と9時)に取り付けることで、気泡の影響を避けることができます。配管の材質や厚さも、信号の伝搬に影響を与える可能性があるため、考慮する必要があります。セメントやコンクリート製の配管、またはライニングされた配管には適さない場合があります。
メリット
超音波流量計の主なメリットは以下の通りです。
- 非接触測定が可能(クランプオン式)。クランプオン式は、配管を切断したり、プロセスを停止したりする必要がない。
- 導電性を必要としない
- メンテナンスが容易(可動部がない)
- 幅広い配管サイズに対応可能
- 高圧に対応可能
- 双方向の流量測定が可能
- ポータブル測定が可能(クランプオン式)
- 圧力損失が少ない
デメリット
超音波流量計の主なデメリットは以下の通りです。
- 初期費用が他の流量計よりも高い場合がある
- 性能は流体条件(清浄度、粘度、粒子/気泡の有無)に依存する
- 気体の測定には制限がある(一般的に通過時間差方式)。ドップラー方式は清浄な気体には不向き。
- 設置に注意が必要(トランスデューサーの正確な位置合わせとカップリング)
- 配管の材質や厚さの影響を受ける
- モデルによっては、温度や圧力に制限がある
- 外部ノイズや振動の影響を受ける可能性がある
- 非常に低い流量の測定には不向きな場合がある
どういう時に選定するか
超音波流量計は、以下のような場合に最適な選択肢となります。
- 既存の配管の外部から流量を計測したい場合(クランプオン式)
- 既存の配管を改造したくない場合
- 導電性のない流体の測定
- 低圧力損失と低メンテナンスが要求される場合
- 下水や汚れた液体の流量測定(ドップラー方式)
- 清浄な液体(水、油など)の流量測定(通過時間差方式)

流量計の比較表
流量計の種類 | 計測原理 | 一般的な精度 | 適合流体 | 主な据付上の注意点 | 主なメリット | 主なデメリット | どのような時に選定するか |
コリオリ流量計 | 振動するチューブのねじれを測定 | ±0.1%〜±0.5% | 液体、気体、スラリー | 振動を避ける、常に液体で満たす | 高精度、質量流量を直接測定、多様な流体 | 高価、振動に敏感 | 高精度が要求される、質量流量を直接測定したい |
熱式流量計 | 熱伝達を測定 | ±1%〜±3% | 気体(一部液体) | 水平設置推奨、振動・熱源を避ける、上流にフィルター | 気体の質量流量を直接測定、低流量に強い | ガス組成に依存、汚れた流体に不向き | 低流量の気体を測定したい、温度・圧力補正が不要 |
容積流量計 | 既知の容積を通過する回数を計測 | ±0.1%〜±2.5% | 粘性液体(一部気体) | 直管長不要、常に液体で満たす、上流にフィルター | 高精度、高粘度流体に適する、電源不要なモデルあり | 汚れた流体に弱い、気泡に弱い | 高粘度流体を正確に測定したい、電源がない場所 |
差圧流量計 | 絞り機構前後の圧力差を測定 | ±0.5%〜±5% | 液体、気体、蒸気 | 十分な直管長、圧力タップの向き | シンプルな設計、比較的安価、多様な流体 | 圧力損失が大きい、ターンダウン比が低い | 幅広い流体を測定したい、コストを抑えたい |
面積流量計 | テーパー管内のフロート位置を測定 | ±1.6%〜±5% | 液体、気体(一部蒸気) | 垂直設置(重力式)、直管長はあれば望ましい | 目視で流量確認可能、線形スケール、低圧力損失 | 垂直設置が必要、流体特性の影響を受けやすい | 流量を視覚的に確認したい、低コスト |
タービン流量計 | ローターの回転速度を測定 | ±0.5%〜±1.5% | 清浄な低粘度液体、気体、蒸気 | 十分な直管長、流れ方向、常に液体で満たす | 比較的高い精度、広い流量範囲、低圧力損失 | 清浄な流体が必要、流れの乱れに弱い | 清浄な流体を比較的高い精度で測定したい |
渦流量計 | 渦の発生頻度を測定 | ±0.7%〜±2.5% | 液体、気体、蒸気 | 十分な直管長、振動を避ける、流体に応じた設置 | 多様な流体、低〜中コスト、メンテナンス容易 | 振動に弱い、汚れた流体に不向き、低流量に弱い | 蒸気や水など、幅広い流体を測定したい |
電磁流量計 | 磁場中の導電性流体の誘導電圧を測定 | ±0.2%〜±2% | 導電性液体 | 配管を常に満たす、磁気干渉を避ける、適切な接地 | 可動部なし、圧力損失なし、多様な導電性液体 | 非導電性流体は測定不可、気泡に弱い | 汚れた液体やスラリーなど、導電性液体を測定したい |
超音波流量計 | 超音波の伝搬時間または周波数変化を測定 | ±0.5%〜±2% | 液体、気体(方式による) | トランスデューサーの適切な設置、配管の状態 | 非接触測定(クランプオン)、低メンテナンス、圧力損失なし | 流体条件に性能が左右される、配管材質の影響 | 非接触で測定したい、圧力損失を抑えたい |
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まとめ
産業用流量計の選定は、アプリケーションの具体的な要件を十分に理解した上で行うことが不可欠です。流体の種類、流量範囲、要求される精度、運転条件、そして予算など、多くの要素を慎重に考慮する必要があります。それぞれの流量計には、独自の利点と欠点があり、「最高の」流量計というものは存在しません。最適な流量計は、特定の産業プロセスのニーズに最も適したトレードオフを提供できるものです。流量計の選定に迷う場合は、流量計メーカーや業界の専門家に相談し、適切なアドバイスを得ることを推奨します。適切な流量計を選択することで、産業プロセスの効率性、コスト効率、そして安全性を向上させることができます。
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