島国日本。
国の周囲を海に囲まれ、昔から人はその恩恵である魚を食べて生きてきた。魚が日本人の主なタンパク源だったし、刺身文化も含めて、日本人は体機能までが魚食に順応している。
そうそう。こんな話、よく聞くことだ。日本各地に多くの漁港があることは知っているし、買い物に行って「今日は魚は仕入れていません」なんて話、聞いたことは無い。魚があって当たり前の毎日。
しかしある日、最近ノルウエー産のサバがあまりにも多いことに、ふと疑問を持った。
気になったので、とあるスーパーマーケットで、パックされた魚介類の産地表示を眺めてみた。以下12枚の写真は、ある1日にある1店舗の1列で撮影したもの。産地は海外だが、加工は日本で行われているものが多い。
<ロシア産>鮭
<チリ産>鮭
<スペイン産>赤魚
<ベトナム産>白身魚
<ノルウェー産>鯖
<アメリカ産>にしん
<アイルランド産>鯖
<アイスランド産>ししゃも
<モーリタニア産>タコ
<インドネシア産>えび
<イギリス産>メロ
<グリーンランド産>カレイ
私自身、予想外の事実に驚いた。国産だと思い込んでいたものの数多くが外国産なのだ。これだけみてもヨーロッパ、アジア、アメリカと世界中から輸入されていることが分かる。
それでは、どの程度の魚介類が輸入されているのだろうか。
以下のデータ類は水産庁が発行している水産白書から引用したもの。
驚くのは、その輸入量。国内生産量383よりも、輸入量は409と数字が大きい。
次にそれがどのように推移しているか。同じく水産白書から、食用魚介類の自給率の推移。
1970年頃まで100%を超えていた自給率が、どんどん下がり2017年度には55%まで落ちている。同じグラフに国内生産量と輸入量も示されているので分かりやすい。国内生産量は1970年代をピークに右肩下がりだ。その頃から輸入量も減ってはいるが、国内需要(緑色の仕向量)に対して、国内生産の減少率が大きい為、輸入の比率が増えていることが分かる。
緑のラインが”国内消費向量”となっているので、1990年頃からの下がり傾向が、いわゆる「魚離れ」という事になるのだろうか?
しかしそもそも日本の人口は減ってきているし、それが原因?と思っていたら、面白いデータがあった。
日本人の年代別の魚介類の摂取量を示したもの。分かりやすいのは、若い人よりも年配の方の方が、摂取量が多いということ。それだけみると、年代によって食の好みが変わるので、年を取ると共に摂取量が多くなるのかな?とも思うが、これを見ると違いそうだ。
年代とは別に、年度別も棒グラフで表されている。例えば、50代だけを見ても、年々摂取量が減っている。これは50代だけではなく、他の年代も同じ。やはりこのデータが正しいとすると日本人が魚介類を食べなくなっている、いわゆる「魚離れ」は実際に起っているとみるべきなのだろう。
但し、素人ながら注意が必要と思うのは、国内生産量がだんだん減っているというナイーブな話。これは、日本で獲れる魚介類が減っている(資源の減少)からなのか、将来を見据えて故意に漁獲量を減らしているのか、これらのグラフだけでは分からないこと。この点は、機会があれば調べてみたい。言いたいことは、獲れないから食べないという事が起こっているかもしれないということ。獲れないとなると、価格も上がるので、さらに食べない(需要の減少)に繋がる可能性がある。
日本の生産量が減少しているのは分かったが、世界はどうだろうか。それが、次のグラフ。笑えるほど上昇している。養殖も盛んだ。
世界の人口の推移も参考にする必要はあるが、世界的には良くニュースで聞くように、健康志向や和食ブームなども相まって、魚介類の消費量が増えていると推測される。
以前ニュースで、脂がのって美味しいと人気の魚=メロの輸入量が減っているというのを見たことがある。その理由は日本が海外に買い負けているかららしい(メロは元々、輸入魚。日本では獲れない。)。そう言われてみれば、以前よく食べていたはずのメロの焼き物。最近たま~に見るのは、メロのカマ(頭の肉)だけ。美味しい胴体の身は、日本には入って来ていないと思われる。
この様なニュースと上で示した様な輸入に依存している状況を考慮すると、「魚が売っていて当り前」が、当り前で無くなるのでは?の不安も生じてくる。
最後のグラフは輸入量と金額の推移。
全体量が徐々に下がっているのは先ほどの通りだが、金額は横ばいの様に見える。一番大きいのは中国。次がアメリカ。ここに書かれている国々のお世話になっている。品目で見ると、サーモン、マグロ、エビがトップ3。
【最後に】
今回は、ノルウェー産のサバ多い?のふとした疑問から、日本がどの程度の自給率なのか、逆にいえば海外に依存しているのかを水産庁のデータを借りながらザクッと見ていきました。
分かったことは、私が思った以上に輸入している魚介類の比率が多いこと。国内の生産量と共に需要も減っていること。また世界で魚介類が取り合いになっている可能性があること。
これらを考える時に、国内生産量が下がっている事実をどうみるかがポイントになると感じました。資源量が減っているという事であれば、将来の日本の為にどうするべきなのか、もう少し皆で考える必要がありそう。日本の水産業をどうしていくか?に関して、これが政治ニュースや選挙トピックスとして挙がっているのを、あまり見ないですね。
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コメント一覧 (2件)
すごい詳しいお話をありがとうございました!
勉強になります。
日本の生産量について主人に聞いてみたところ、減っているのは魚が取れなくなったからで、取れなくなったのは取りすぎたからだそうです。
ちなみに取りすぎたのはどこの国が?と聞いたら「日本が。あと中国もあるかな。」だそうです。
yuccow様
コメント有難うございます。私も本などで少し調べているのですが、仰る通りで『乱獲』に原因があることも事実の様です(魚種にも依る様子)。日本は事業者の自主管理を基本としていることも問題とのこと。ここでも例を挙げたノルウェーなどは積極的に政府が漁業に関与し、科学的調査結果を基にして漁獲可能量を決める。漁獲量の分配をルール化するという取り組みで、資源の確保と事業者の利益の双方に成功しているという例もあるとのこと。日本が見習うべきこともあるのでは?と感じています。