鮮魚店や市場、スーパーマーケットに行けば、魚はいろいろな状態で売られています。一匹丸ごと(以下、丸魚)、刺身、切り身、アラ、調理済みのものなど。
すぐに食べたいのあれば、刺身や調理済みの商品を買えば良いし、手早く調理をしたい場合は切り身を買えば良いのですが、、、それでは丸魚を買う理由は何でしょうか。
私の場合は丸魚で買うことの方が多いのですが、今回はそのメリットについてまとめます。一般的に丸魚での購入が敬遠されるのは、手間・匂い・ゴミの問題と思いますが、それを承知でなぜ購入するかについてです。
魚一匹買いのメリット
食育
命を頂くとはどういうことかを身近に感じることが出来る。
丸魚を捌くと切り身では想像できないことが体感できます。骨を断てば血が流れる。
腹を裂けばワタが出てくる。胃袋を開ければ、エビや小魚が出てくる。新鮮でない魚は臭い。ヒレが刺されば痛い。
この様に、原型を処理して行きそれを食べる、という現実を体感することは、とても大事なことだと思います。命を頂く過程には残酷さも伴う。
我が家では、買ってきた丸魚は子供に見せて、触らせて、ウロコ取りなど出来ることはお手伝いしてもらう様にしています。五感から気が付く何かがあるはずです。また、自分が何かしら関わったものを食べるのは、おいしいと感じる様です。
また可食部は出来る限り食べます。小魚の骨はレンジで骨せんべいにすれば食べれるし、アラは味噌汁、内臓は煮つけなど、極力捨てないことで感じる何かがあるはずです。大切にすること工夫すること。
新鮮である
自身で新鮮さを見極められない場合は、あくまで性善説での話になるのですが、丸魚で売れるということは程度こそあれ新鮮なものです(鮮度はお店の人に聞くのが確実)。
丸魚で売られているものの多くは未だ内臓が取り除かれていない状態です。痛みやすい状態とも言えますが、逆に言えば、内臓を抜かなくても売れるほど比較的鮮度が良いということです。
回転ずし屋さんで「店内皮引き」を売りにしていることがありますが、これも鮮度が良いことのアピールです。皮を引いた(除いた)状態では、身が空気に触れるため、劣化を早めてしまいます。お客さんに提供する直前に皮を引く手間を掛けている、よって、より新鮮ですということ。
刺身や切り身の状態も同様に、空気に晒された状態ですので、表面積が大きくなればなるほど劣化は早くなります。夕方に半額となっているのはその理由であることはご存じかと思います。
その点、新鮮な丸魚は適切な処理をすれば、長く冷蔵庫で保管出来る点が良いところです。そして、新鮮な魚は美味しい。
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栄養価が高い
新鮮であるという事は、栄養価が高いということ。魚の脂には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった血液をサラサラにしたり脳の機能を維持する多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれていますが、この不飽和脂肪酸は、とても酸化されやすいという性質をもっています。
上に書いた通り、空気に晒され鮮度が悪くなるということは、栄養も損ねているということ。EPAやDHAを摂取する為に、刺身で食べることが奨励されているのは、それが理由です(新鮮かつ熱を掛けない)。魚を捌いて直ぐに食べることが出来るということは、この栄養の面においても非常にメリットが大きいと言えそうです。
美味しい部分を逃さない
魚の美味しい部分はどこか?と問われれば、(魚の種類にもよりますが)、皮そのもの、皮に近い身、骨の近くの身、頭のほっぺ、目の上あたり、肝、真子、白子と答えたいです。丸の魚で頂く醍醐味はこの辺りにもあると感じます。内臓が美味しい魚を頂けたときは、幸せを感じます。
魚がキレイに食べれる様になる
友達と食事をする時に、そのお相手が魚をとてもキレイに頂いた場合、どの様な印象を持ちますか?頭が良さそう、育ちが良さそう、モノを大切にしてそう、器用なのかな。この様に悪い印象は持たないのではないでしょうか。それが恋人だとしたら、あなたの印象はグッと良くなるはずです。食事をするときの印象って大切ですから。
自慢では無いですが、私は、魚を上手に食べられます。身は残さずに、スッとした骨が残ります。これが出来るのは、魚の形を知っているからです。魚を捌く時に、難しいと感じるのは、骨がどの位置に入っているか分からない時です。何度も繰り返しているうちに、骨の形が頭に入ってきます。この経験は食べる時に力を発揮してくれます。骨に沿って、すぅっと箸を入れると、面白い様にホロホロっと身がほどける。見た目良く食べられる様になります。食べるのも楽しくなりますね。
季節感が味わえる
真子を持った真鯛が出てくれば春を感じ、タカベや新物のサンマに夏を感じる。今しか味わえないものが食卓に並ぶと、ワクワクする。
捌くこととは直結はしないかもしれませんが、捌くことを前提として丸一匹の魚を見れば、季節の移り変わりを感じることが出来ます。冬のヒラメなんて贅沢だとか、天然のカンパチは今だけだとか、会話をしながら季節を感じます。食を通して四季を感じることは、贅沢な楽しみだと思います。
無心になれる
私の場合、丸魚を買った瞬間から、それ以外のことは考えなくなります。時間が経って痛んでしまうのは望むところではありませんので、一目散に家へ帰り、痛む前にワタは出しておこうと考えます。
まな板の上に魚が上がったら、そこからは真剣勝負です。先ずは命をくれて有難うと思います。それからは美味しく頂ける様に出来る限り、手早く上手に捌きたい、その一心です。その間、別のことは考えません。
経済的
お近くの鮮魚店で、刺身と丸魚の価格を比べていただければ、よく分かると思います。
同じ魚だとした場合、手間代(技術料)が含まれるので、やはり調理が施された刺身は割高です。
魚が捌ければ、いつもの切り身ではなく、魚市場や鮮魚店で丸魚を安く魚を買うことが出来ます。鮮度と価格からするとその差は歴然。魚市場のコストパフォーマンスに慣れてくると、やはりスーパーに売られている丸魚は鮮度が低く、なおかつ高いものが多いです。もちろんスーパーでは、そこにたどり着くまでに運送費や各種経費が含まれているので当然と言えば当然です。しかも便利ですので、それを否定する意図は御座いません。
さらに魚を捌いて料理することを趣味に出来た場合、趣味に掛かる費用が食費に直結できるので、一石二鳥です。つまり、趣味なのに、自分の「おこづかい」を使わなくて済みますよ。
料理の選択肢が広がる
切り身よりも丸魚の方が、選択肢は多くなります。例えば、刺身だけ見ても、炙りにしたいとか、皮を残して頂きたいとか、更には少し熟成させたいとか、自分好みの調理ができます。
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人に喜ばれる
やはり下手でも一生懸命に作ったものは大変よろこばれます。特に丸魚から調理されたものは、最近では希少価値があると思われます。手作りの刺身やフライがテーブルに並ぶと、場に温かさが出ますね。
モテる
魚が捌ければ「モテる」かもしれません。
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まとめ
今回は私が感じる『丸魚を買う・捌く・頂くメリット』について記載しました。手間、臭い、ゴミの課題を乗り越えて、それでも丸魚を買うのはなぜかについて。慣れるまではそれなりの大変さはありますが、慣れてしまうと、安い魚を迷わず買えるなどの瞬発力もついてきますし、空き時間に捌いて冷蔵庫入れてこうとかの柔軟性も生まれます。それから本文の食育・鮮度・季節感など、手間に見合うメリットが多いことをお伝えしたく記事にしました。参考になれば、幸いです。もし未だの方は是非チャレンジしてみて下さい。包丁の扱いはくれぐれも注意してください。
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