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【知らなかった】全盛期の1%未満/国産ニシン漁獲量/消費者が出来ることは?

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別名「春告魚(はるつげうお)」と呼ばれる魚。どうやって人々に春を告げてくれるのでしょうか。

 

答えは、産卵期に入った春、卵を産むために大群が岸に押し寄せる姿を見せてくれる事。その時期を心待ちにして、人々はその魚を捕らえ、食してきたのです。あぁ、春が来た。今年も美味しい魚が食べれる、たくさん売って家族が養える、と安堵し喜んだことでしょう。

 

この大群が押し寄せて見せる、ある現象を「群来(くき)」と呼ぶそうです。メスが産卵した場所に、オスが放精することで、海が白濁する、そんな現象が見られるのです。

 

「春告魚(はるつげうお)」の標準和名は、みなさんご存じ「ニシン」です。ニシンの卵と言えば、「数の子」ですね。これを春に楽しめる。食を通して季節を感じる、素晴らしいことではないですか。北海道の民謡「ソーラン節」はニシン漁の時に謡われた歌として有名です。

 

にしんの写真

 

春は大漁。漁師も庶民も喜ぶ姿が目に浮かぶ?しかし、現実はそうではありません。「群来(くき)」は当たり前にある日本の風物詩では無くなったんです。今回は、そういった現実を少しでも多くの人に知ってもらいたい、それが主旨です。どうかお付き合いください。「ニシン」から見えてくることは何か。

目次(Contents)

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知っておくべきニシンの漁獲量推移

 「春告魚」と春の代名詞になるほどの魚。さぞかし多く漁獲されるのでしょう。それでは、漁獲量の推移を見ていきましょう。赤の線は右軸なのでご注意下さい。

 

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出典:北海道立総合研究機構

グラフを見て驚きました。1890(明治30)年頃には約80万トン獲れていたニシンが、1900年代の初期から減り始め、1955(昭和30)年には、ほぼゼロに近い箇所に位置しています。80万トンの1%は8000トンですから、現状は、全盛期の1%も獲れておらず、近海モノは「幻の魚」とまで呼ばれるようになりました。絶滅の危機といってもおかしくないでしょう。

 

しかも考えてみて下さい。明治30年頃の魚を獲る技術は今と全く違うはず。トロール船など無かったはずです。それでこれだけの漁獲があったんですね。

 

さて漁獲量減少ですが、一般的に原因として挙げられるのが

  • 乱獲
  • 環境(水温等)の変化

です。 漁獲量が減り始めたころは、水温等の環境の変化はなかったとも言われていますので、問題は「乱獲」との見方が強い。そういう悲劇の魚でもあるのです。

 

春に大群が押し寄せてくるなんていうのは、過去の話。もはや「春を告げてはくれない」んです。皆さんが口にしている干物や数の子は、その殆どが輸入品。今では、魚の資源を議論する時に挙げられる代表格「ニシン」となってしまいました。

 

ニシン漁獲量、回復の兆候もある

只、注目すべきは、グラフの赤線と右軸で示される漁獲量の回復傾向。もちろん桁は違いますが、ゼロに近くなったものが、2000トンくらいまで、持ち上がっています。これには、資源回復に向けた取り組み等が関係しているという見方がある様です。目下、研究中の案件と思われます。

  • 稚魚の放流事業(1996年より石狩湾系)
  • 小さい魚を獲らない取り組み(網の目を大きくする)
  • 環境の変化(なぜか多く残っいる年代がある)

こういった活動が行われていることも事実ですが、自然を相手にする取り組みなので、とても大変だと思います。有るものを獲りつくすのは簡単ですが、それを取り戻すのは地獄でしょう。2000トンまで回復したとはいっても、それを左軸に戻して眺めれば、誤差範囲とも言えなくはない。

 

資源量が減って何が悪い? 

それともう1点。漁獲量を増やしたところで、事業として成り立たないと、日本を支える産業とはなりません。いわゆる、市場に出回る量と価格の問題です。大漁に獲れたら、安く出回る。儲けが出ないから、また多く獲る。これだと、また同じ結果になってしまいます。

 

もしくは、そもそも需要が少ないから、安くなるという問題。これは、よく言われる「魚離れ」の話に通じます。

関連記事【知らなかった】魚介類自給率55%/輸入依存の島国日本

 

朝市の写真 

消費者が出来る事を考える

そういったことを踏まえて、消費者として出来る事は何なんでしょう。私が思うコトを列記します。

  • 魚食のメリットを知ろう
  • 魚を食事に多く取り入れよう
  • 魚の捌き方を覚えて安く買おう
  • 魚の値段を豚肉と比べない(高いと感じても買おう)

関連記事【まとめ】丸一匹の魚(丸魚)を買う・捌く・頂くメリット

 

根底にあるのは、日本の文化である「魚食」を見直したいという思いです。これは島国日本で生きていく日本人の体に染みついた原理原則の部分のはずで、豊かな漁場を活かして、産業として成り立たせ、それを基盤に健康で豊かな暮らしを送る。これがあるべき姿の様な気がしているのです。

 

理想の姿について考える

 日本で石油は獲れません。しかしながら、豊かな漁場があり、そこで獲れる魚を新鮮な状態で美味しく頂く技術はあるでしょう。ここに価値を見出すべきではないかと思っているのです。分かりやすく言うと「子供がなりたい仕事に”漁師”がランクイン」、ここが目指すべき先ではありませんか。

 

ロジックはこうです。

  1. 魚食を見直すことで、魚の需要が増える(消費者の努力)
  2. 適正に資源管理を行う(政府の努力)
  3. 現時点の資源管理とは、漁獲量を減らす方向なので、市場への供給は減る
  4. 需要が増え、供給は減るので、魚の値段が上がる
  5. 値段が少し上がっても理解ある消費者は買うので、漁業関係者の収入は安定する
  6. 一方で、漁獲量(獲っても良い量)が決められているので、漁業関係者は経費を下げる工夫をする(漁業関係者の努力)
  7. また、同時に漁業関係者は市場に出回る魚の量を平均化する工夫をする。皆が同時に大量に売ると魚が安くなってしまう。時期をズラすなどの工夫があるはず。
  8. 政府も漁業者の為に制度変更できるところ実施する(政府の努力)
  9. 漁業関係者の収入が安定すれば、そこに投入される補助金(血税)が減り、消費者に還元される(消費者の負担減)
  10. 資源管理されているので、いずれ魚の資源量が増える
  11. いずれ魚の市場価格が下がる、もしくは安定する(消費者の負担減)
  12. これらが政策として継続してコントロールされ、安定化する
  13. 漁業関係者の収入が増え、人気も高まり、有能な人材により技術が向上する
  14. 日本の産業として安定する(政府、漁業関係者、消費者の利益へ)

これを書いていて、ジョンレノンの言葉が頭をよぎりました

You may say I’m a dreamer. But i’m not the only one. I hope someday you’ll join us.

1人の力では 何も変わりませんが、皆の力が集まれば、何かが出来るかも知れません。

 

二ホンウナギ、太平洋クロマグロは、絶滅危惧種です。そして、マアジやマサバも予備軍と言われ、さらにはサンマも毎年のその漁獲量減少がニュースになっていますね。北海道の固有種である本シシャモだってそう。

関連記事:本シシャモとカラフトシシャモの比較

 

大衆魚と呼ばれていたニシンが、もはや大衆魚と呼べなくなった。これと同じことが起きていて、将来、日本で魚が獲れなくなったら、どうなるのでしょう。 

泳ぐ鯵の写真

 

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最後に

国産ニシンの漁獲量推移を見た時に、少しでも多くの人に知ってもらう必要があるのではないかと思い、微力と知りながら、記事にしました。日本の得意であるべき分野にも関わらず、それを潰しかけている実情に疑問を持たざるを得ません。また、それが自然環境、資源の問題となると、本能的な危機感を抱いてしまいます。次の世代に残してあげれることは無いか。そうは言いながらも、個人としてどう問題提起すれば良いのか、となると難しい問題です。

 

これは漁師を始めとする漁業従事者の問題では無く、政策の問題だと思えてなりません。

 

我々としては、先ずは知ることから始める。この記事が、その一助になれば幸いです。

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