今回は、ウナギの資源について少しだけ言及します。
一読いただけると幸いです。
(この記事は、3~4分で読めます)
絶滅危惧種に指定されている事実
「ニホンウナギが絶滅の危機にある」という話をお聞きになった事がある方も多いと思います。そんなこと言われても、スーパーマーケットに行けば、大量のウナギが売られていて、今一つ実感が湧きませんね。その辺りのことを少しだけ。
実際に、ニホンウナギは国際機関から絶滅危惧種の指定を受けています。また、生産量も大きく減っているんです。
絶滅危惧の話をすると、ニホンウナギは、平成26年6月に国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧ⅠB類に指定されました。いわゆるレッドリストに掲載されたのです。レッドリストにはいくつかの区分があるのですが、
という定義です。このⅠB類には、ニホンウナギの他に、アメリカウナギ、本マグロ、ラッコ、トキ、ジャイアントパンダなどが含まれています。
私の認識が間違いなければ、中国産とされているウナギの殆どはヨーロッパウナギという種類です。このヨーロッパウナギも絶滅危惧ⅠA類で、なんとニホンウナギよりもランクが上。もっと絶滅が危惧されている分類がされています。
即ち、世界的にウナギは絶滅の危機に瀕していると言えるでしょう。
稚魚採捕量の推移
以下のグラフは「ニホンウナギ稚魚 国内採捕量の推移」です。農林水産省の資料から引用しました。
ご覧の通り昭和30年代に、200t付近だった採捕(さいほ)量が、現在は10t付近をウロウロとしている状況です。そんな中、最新のニュースでは、この様な報道がされています。
勘の鋭い方なら、私が言いたいことは分かってもらえると思います。昨年比4.6倍だと豊漁なんて数字のマジック。グラフを見て頂ければわかる様に誤差範囲でしょう。スーパーマーケットに売っているウナギ価格が安くなっていたら、信じてあげても良いですが。。。
稚魚採捕量とは?
もう1つだけ、基本的な知識として覚えてらえると嬉しいです。
先ほどお見せしたグラフのタイトルに注目してください。「ニホンウナギ漁獲量推移」では無く、「ニホンウナギ稚魚採捕量推移」なんです。
我々が口にしているウナギの殆どが、養殖ウナギです。養殖と稚魚採捕の関係がポイントです。殆どのウナギが稚魚(シラスウナギ)の状態で漁師さんに採取されて、養殖池に送られる。それからウナギは養殖池で大きく育ちます。我々消費者はそれを購入しているんです。下の絵が分かりやすいと思います。これは、ウナギの一生を示したものです。(農林水産省資料より引用)
海で孵化したウナギが、稚魚であるシラスウナギになる。川を遡上すると、川でほとんどの時間を過ごします。最後には川を下り、海で産卵して一生を終える。ざっくり過ぎますが、この様なものです。鮭と反対ですね。鮭は海で暮らし、川で産卵です。
そしてグラフが示す稚魚採捕量というのは、人間がシラスウナギの状態で漁獲しているということです。なぜこんなことをしているか?というと、ウナギは完全養殖に成功していないからです。例えば真鯛なら人間が卵を産ませて、大きく育てる事が出来ます。それがウナギではできません(技術が確立されていない)。なので、天然のシラスウナギを捕まえる、養殖池で育てる、販売するという効率化が図られているのです。
放流がどうとか環境がどうとか色々な問題はあるのですが、単純に考えるとやはりこのシラスウナギの採捕量をコントロールして資源管理するしかないのだと思います。実は国としても漁獲量規制は行っています。しかし、これが妥当なのかは議論の必要があると思います。なぜなら、グラフでも分かる通り、資源が増えないからです。
許可されている稚魚採捕量
次の表が、国から許可された都道府県ごとの池入れ割当量です。「池入れ」というのが、「シラスウナギを漁獲して養殖池に入れる」という意味ですね。豊漁といわれた2020年の採捕量は17.1tでした。それに対し、採捕(池入れ)が許されている上限は21.7tです。
管理上限が21.7tに対して、豊漁と呼ばれる2020年の実績が17.1t。管理値を下回っているから良いと考えますか。それとも、管理値が高すぎると考えますか。
★これとは別に、市場に出回っているウナギの半分以上が、密漁や過少申告などの、不法のウナギとも言われています。これだと真面目に採捕量を守った業者が、損をする結果を生みますね。池入れ量という管理された数字にカウントされません。悲しい現実です。
=スポンサーリンク=
まとめ&消費者のあるべき姿
今回は、ニホンウナギの資源の状況について、ザクッとお話ししました。お伝えしたいことは、ウナギの資源問題があることを知ってほしい、これにつきます。
そして最後に、我々消費者としてのあるべき姿について、私はこの様に考えます。
- ウナギが絶滅危惧種に指定されていることを知る。
- 販売されたウナギは食べて楽しむ。人を魅了する理由を実感する。
- 但し、闇雲に消費するのは控える。
- その味を噛みしめながら、こんなに美味しいモノをどう将来残していくべきか思いを巡らす。または、ご家庭で議論してみる。
- 政策として、何らかのウナギ資源管理が実施される場合は、快く協力する。
如何でしたか。「土用の丑の日」、とても良い機会なので、美味しいウナギと人間のこれからの関わり方について、少し考えてみては如何でしょうか。そんなご提案をさせていただきました。
ウナギの資源の問題が子供でも分かる無料教材が御座います。コチラの記事で紹介していますので、宜しければチェックしてみて下さい。
こちらの記事もいかがですか?
コメントお願いします(※は必須項目)